【競馬】橋口師、25年20頭目にして悲願のダービー制覇　今も厩舎に住み続ける数少ない存在

ママのφ ★＠＼(^o^)／

数々の夢を背負ったワンアンドオンリー（牡３、橋口）が世代７１２３頭の頂点に立った。横山典弘騎手（４６）の
好騎乗に導かれての先行押し切り。定年まで残り１年半の橋口弘次郎調教師（６８）は初挑戦から２４年、
２０頭目の挑戦で悲願をかなえた。来年にはキングジョージ６世＆クイーンエリザベスＳ（Ｇ１、芝２４００メートル、
７月＝英アスコット）挑戦など、世界への夢もふくらみ始めた。

右へ、左へ。検量室前、１着の枠場へ、よろめくように歩いた。両目を充血させ、血の気の引いた顔は青白い。
６８歳の新ダービートレーナー、橋口師だ。握手攻めに応える右手にも力が入らない。放心状態で愛馬
ワンアンドオンリーの帰りを待った。気温３０度超の熱き大一番。１４万人に迫る大観衆の熱狂の渦で、
白い帽子を目で追い、立ち上がって叫んだのは覚えている。あとは真っ白。夢心地だ。

「ダービーは格別やな。地に足がつかない。後にも先にも、こんなこと初めて。涙も枯れてる。もうやめても
いいぐらい。競馬人生で最高の日だな」

まぶたを震わせ、泣くのをこらえる。妻子に抱きつかれると「おまえたちが来たら泣きたくなるやろ」と言った。
宮崎の牧場に生まれ、毎年ダービーデーはラジオから雑音交じりに聞こえる実況に想像をふくらませた。
厩務員から調教師となり、初挑戦の９０年から２０頭目の挑戦。定年まで１年半余りで悲願をかなえた。

金で買えない価値がある。それがダービー。１０年に自身４度目の２着となったローズキングダムは同年、
ジャパンＣで進路妨害を受けて繰り上がりの制覇となった。「これがダービーならよかったのに…」。思わず
口をついた。国内最高賞金レースよりも上だ。「降着だろうが繰り上がりだろうが何でもいいから勝ちたい」と
念じ続けてきた。

負けて学んだこともあった。「一番悔しかった」と振り返るのは９６年に１番人気で２着のダンスインザダーク。
「負けることは考えてなかった。俺も若かった。そんな気持ちで見とったこと自体がね。今は心配事ばかり
頭をよぎる」。今も厩舎に住み続ける数少ない存在。夜中に馬房で物音がすれば跳び起きる。ちょうど
１年前の６月１日に入厩したワンアンドオンリーは１度も放牧へ出さず“ひとつ屋根の下”で暮らしてきた。
デビュー戦１２着から敗戦を糧にして、ダービー馬まで育て上げた。

最後にもう１つ、夢がある。レース前に前田オーナーとは「来年はキングジョージや凱旋門賞に挑戦できたら」
と語り合ったという。「キングジョージにハーツクライ（０６年３着）の子で挑戦するのは夢でもあった。さらに
鍛え直して、挑戦できる成績を引っ提げて行けたら。菊花賞もいい競馬をしてくれるのでは」。胸の青い
ネクタイは、父ハーツクライの現役時に何度も締めた思い出の品だ。やっとつかんだ唯一無二の勝利。
祝福と取材の輪が解けると自転車にまたがり、ちょっぴりふらつきながら愛馬のもとへと急いだ。【太田尚樹】

◆橋口弘次郎（はしぐち・こうじろう）　１９４５年（昭２０）１０月５日、宮崎県生まれ。８０年に調教師免許を取得し、
８２年に開業。９０年にはＪＲＡ賞（最多勝利調教師、優秀技術調教師）を受賞。ＪＲＡ通算成績は１日時点で
８１３３戦９３９勝、重賞９０勝（Ｇ１・１０勝）。海外Ｇ１はハーツクライで０６年のドバイシーマＣを制している。

ニッカンスポーツ　2014年6月2日9時10分　紙面から
http://www.nikkansports.com/race/news/p-rc-tp0-20140602-1311032.html

【競馬】橋口師、25年20頭目にして悲願のダービー制覇 今も厩舎に住み続ける数少ない存在

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