【サッカー】北沢豪、Ｗ杯に届きそうで届かなかったサッカー人生

YG防衛軍 ★＠＼(^o^)／

「キーちゃん（北沢の愛称）を入れろ！」

　ピッチにいるラモスさん（瑠偉、現Ｊ２岐阜監督）が、監督のオフトさんに向かって叫ぶ姿が目に焼き付いている。

　〈１９９３年１０月２８日、米国Ｗ杯アジア最終予選イラク戦。勝てばＷ杯初出場が決まる日本は２－１の
後半ロスタイムに同点とされ、夢切符を逃した。北沢はベンチ入りしていたが出場機会はなかった〉

　試合はリードしていたけれど、激戦続きの疲労もあって選手の足は全然、動いていなかった。
一方で僕は最終予選はベンチスタートが多くて体力的には問題なし。しかも直前の韓国戦（２５日）では
フル出場させてもらい、持ち前のスタミナを生かした動きで勝利（１－０）に貢献していたからやれる自信もあった。

　結局、交代で入った選手はＦＷの２人（福田正博、武田修宏）。「代わるなら俺だろ」
とずっと思っていたんだけどね。当時２人だった交代枠を使いきった時点でピッチに立てる可能性は消滅したけど、
僕はずっと（ウオーミング）アップし続けていた。悔しくて、やりきれなくて、「座っていられねぇよ」みたいな気持ち。
ラモスさんは僕を呼び続けているし…。

　だから「ドーハの悲劇」を象徴するシーンとして、同点にされてベンチメンバーが崩れ落ちる映像がよく流れるけど、
あそこに僕は映っていない。それどころか試合中のベンチにも姿はないはずだよ。

　せめて勝っていたら救われたんだけどね。僕と同じＭＦでフル出場した森保（一、現Ｊ１広島監督）は泣きながら
「キーちゃんが出ればよかったんだ」なんて言ってきたから、「そんなことを言われたら俺が辛いじゃないかよ」と。
こっちが泣きたいくらいだった。

　中盤のラモスさん、吉田（光範）さんの両ベテランは相当しんどそうだった。自分はあの場面で使ってもらえる
信頼を得ていなかったと思うようにしているけど、今でも納得はしていない。オフトさんの心情として貢献者の
ラモスさん、吉田さんに最後まで戦わせたかったのかな。

　実は昨年、オフトさんと会う機会があった。サッカー界をリタイアするということで東京都内のレストランに招き、
当時の仲間も集結した。そのときにオフトさんへの「質問タイム」みたいな感じになり、周囲にあおられた僕が
イラク戦で使われなかった理由を聞いたんだ。

　だけどオフトさんはすごく答えにくそうで、「それは墓場まで持っていく」みたいなことを言っていたので、
（追及するのを）途中でやめた。おかげで今でも消化できていないけどね。

　９８年にはフランスＷ杯直前で最終メンバーから外された。結局、Ｗ杯に手が届きそうで届かない
サッカー人生だった。メンバーは監督が選ぶものだから仕方ない。解説者となった今、選考に漏れたとしても、
それで終わりじゃないということを後輩たちに伝えていくつもりだ。（おわり）

http://www.sanspo.com/soccer/news/20151023/jpn15102311000001-n2.html