【競馬サイドストーリー】北島三郎、志村けん、和田アキ子…有名人馬主が勝てない「カネ出すが口も出す」

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芸能人やスポーツ選手が馬主資格を取得し、自ら所有する競走馬をレースで走らせている例は少なくない。華やかな世界で活躍する彼らには同じように華やかな競馬が魅力的なのだろう。
が、大タイトルを制するケースはまれ。ましてＧＩなど夢のまた夢。それは“馬主道”を心得ていないためだ。（田中恵一）

■ ハマの大魔神がＧＩで快挙

　先ごろ、東京競馬場で行われたＧＩヴィクトリアマイルで１番人気ヴィルシーナが優勝した。ＧＩ２着４回と典型的な「銀コレクター」のうれしい初戴冠に男泣きしていたのはオーナーの佐々木主浩さん。
ご存じ、元横浜の“大魔神”で、元大リーガーの同氏にとって８年目、８度目の挑戦で念願のＶだった。
　「やっと…。最後はやられたかと思ったけど、根性がすごい。うれしいです」と流れ落ちる汗と涙をぬぐいながら満面の笑みだった。

　有名人馬主は少なくない。演歌歌手の北島三郎さんは「キタサン」の冠馬名でファンにおなじみだし、ＪＲＡのＣＭにも出演した俳優の小林薫さんも周知。
　ＡＫＢ４８の総合プロデューサーの秋元康さん、タレントの志村けんさん、和田アキ子さんら大物芸能人が馬主登録しているのもよく知られている。
　が、その数に比べてＧＩ勝利数は多くない。最近の例では、歌手の前川清さん（前川企画）所有のコイウタが２００７年のヴィクトリアＭを優勝。
その前となると、１９５２年の女優、高峰三枝子さんまでさかのぼらねばならない。高峰さん所有のスウヰイスーが桜花賞、オークス及び安田賞（現在の安田記念）を勝ったのだが、
それから半世紀以上、前川さんの快挙は「５５年ぶり」と大きなニュースにもなった。

■ ＧＩの優勝馬主になる難しさとは

　「ダービー馬のオーナーになるのは一国の宰相になるより難しい」
　イギリスの元首相、チャーチルはこう言ったとされる。知られたところでは、「ダービーに勝ったら騎手をやめてもいい」（柴田政人騎手）という言葉もあった。
　同様に有名人のＧＩ勝利は至難といわれている。馬のよしあしを見極める眼をもったプロ馬主でさえ、ＧＩは「高嶺の花」なのだ。この道については素人の芸能人やスポーツ選手がやすやすとＧＩ勝利を手にできないのは当然だろう。
　前出の北島三郎（大野商事）さんは３０年来の馬主だが、２００１年にキタサンチャンネルで勝ったＧＩＩ（ＮＺＴ）が最高位。小林薫さんは２００２年にブルーリッジリバーで桜花賞２着に泣いている。
　秋元康さんは、その名もゴールドディスクという愛馬が稼ぎ頭だが重賞とは無縁。志村けん（志村康徳）さんはアインイチバンなど馬名こそおもしろいが出世していない。
和田アキ子（飯塚現子）さんもソウルスピリッツが条件馬で終わっている。

■ 「天の声」連発の著名人オーナー

　ここまで名前をあげた人の悪評は聞かないが、それ以外の著名人オーナーに対する関係者の悪口はけっこう耳にする。
　その道でトップを極めたという意識があるからか、競走馬の育成や調教、レース選択などにやたら口を出してくる人が少なくないそうだ。競馬の世界で馬主の声は一種の天の声。
よほどへそ曲がりな調教師でない限り、オーナーの意向には逆らえない。勢い、馬本位ではない使い方をされたり、個性に合わないトレーニングを課されたりする。結果が出ないのも当然だろう。
　初戴冠の佐々木さんについては、いいウワサしか聞かなかった。つまりプロである調教師にすべて任せていたわけ。いずれ結果は出るだろうとはトレセンでの前評判だった。
　とはいえ、金は出しても口は出さない…という“プロ馬主道”を会得しているのは少数派。やはり有名人のＧＩへの道は険しいということか。

http://www.sankei.com/west/news/130518/wst1305180083-n1.html