【スイスショック】東欧人、スイスフラン建てで住宅ローンを組むのが一般的で軒並み爆死

　【ジュネーブ＝原克彦】スイス国立銀行（中央銀行）が15日に突如、通貨高を抑えるための対ユーロでの上限を撤廃したことが波紋を広げている。時計大手の首脳が批判する声明を発表したほか、
国際通貨基金（ＩＭＦ）のラガルド専務理事も他の中銀との連携不足に苦言を呈した。影響はスイスフラン建ての住宅ローンを抱える中・東欧の消費者にも波及する可能性が出てきた。

　スイスの主要企業20社を採用する株価指数ＳＭＩは15日、スイスフランが主要通貨に対して急騰したのを受け前日終値に比べ8.67％も下落。
ネスレ、ロシュ、ノバルティスなど通信会社スイスコムを除く全銘柄で下げ幅が５％を超えた。

　最大の落ち込みは「オメガ」などでスイス製を売りにする腕時計世界最大手のスウォッチグループで、前日比で16％も下げた。
ニック・ハイエク最高経営責任者（ＣＥＯ）は電子メールでの声明で、「この決定は津波だ。輸出産業、観光業、そして最終的には国全体にとってもだ」と怒りをあらわにした。

　ＩＭＦのラガルド専務理事は米ＣＮＢＣの番組で「（事前に）私に連絡がなかったのは驚きだ」と発言。
金融市場では各国当局との連携が重要だとしたうえで「他の中銀の仲間に伝わっていたことを願うが、私にはわからない」と語った。

　動揺は、自国通貨より金利が低いスイスフラン建てで住宅ローンを組むことが珍しくない東欧にも及ぶ。
ＡＦＰ通信によると約６万人がスイスフラン建てローンを抱えるクロアチアでは、借り手の団体が財務相に緊急会談を求めた。ポーランドは住宅ローンの約４割がスイスフラン建てという。

　スイスフランは15日、ポーランド・ズロチやクロアチア・クナに対しても２割近く上昇した。対ユーロでは一時１ユーロ＝0.86スイスフランまで急騰したが、16日は１スイスフラン近辺でもみ合っている。

　スイス中銀は繰り返し「無制限介入」で１ユーロ＝1.20スイスフランの防衛ラインを維持すると強調していただけに、今後も不満を訴える声が続く可能性がある。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM16H04_W5A110C1EAF000/?dg=1