神奈川新聞「在日コリアンを貶めるデモを許可した神奈川県警の責任は重い」「“朝鮮人”はﾍｲﾄｽﾋﾟｰﾁ」

在日コリアンをおとしめ、殺害までもあおるヘイトスピーチデモを繰り返す男性に対し、県警はデモのための道路使用を許可した。
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人権侵害がなされる恐れが高いにもかかわらず、その場を整える判断をしたことで県警にはより大きな責務が生じた。
３日に施行された新しい法律は、ヘイトスピーチが許されないものであると宣言し、解消のための施策を国や地方公共団体に求めている。

一方で、表現の自由は重要な人権であるとして禁止規定や罰則を設けていない。ただし、これは表現行為を必要以上に萎縮させてはならないという配慮からだ。
特定の個人に対する脅迫や名誉毀損（きそん）、侮辱が禁じられているように、表現の自由はそもそも無制限に認められているものではない。

だからこそ、ヘイトデモを行う恐れが高い津崎尚道氏に公園の利用を認めないという川崎市の決断は可能だった。

「在日」や「朝鮮人」といった不特定多数に向けられたヘイトスピーチの場合、従来の法律では違法行為としてとらえることが難しいとされてきた。
許さないとする新しい法律ができたことで、許される言動と許されない言動との切り分けが法の裏付けをもってできるようになり、後者である限り、やはり同法が求めるヘイトスピーチの「解消に向けた取組の推進」のために不許可にするという判断が成り立った。
公園利用を許可をすればヘイトデモを行うことを認めることになり、それは解消に向けた施策とは正反対のものであるからだ。

その意味で、道路使用を認めた県警が自らの判断によって負った責任は重い。
津崎氏が過去１１回主催したデモで本人や参加者によるヘイトスピーチがなされなかったことは１度もない。
今回も、在日コリアンが数多く暮らす川崎市川崎区桜本地区を標的にした過去２回と同様、「川崎発！日本浄化デモ」とうたい、その「第三弾」と告知されている。

解消法の施行を受けて全国の警察本部に出された警察庁通達にもこうある。
〈違法行為を認知した際には厳正に対処するなどにより、不当な差別的言動の解消に向けた取組に寄与されたい〉

そうであるなら、デモ参加者の言動に目を光らせる必要がある。そして脅迫、名誉毀損、侮辱などに当たる発言がなされた場合、直ちに制止されなければならない。放置すれば解消に寄与することはできないからだ。
新法がヘイトスピーチを許されないとしているのは、それが民族的マイノリティーに多大な苦痛を強い、地域社会に深刻な亀裂を生じさせているためだ。
この趣旨に照らし、やはり津崎氏に川崎・桜本でのヘイトデモを禁じる仮処分を出した横浜地裁川崎支部は決定書の中で、ヘイトスピーチが「憲法の定める集会や表現の自由の保障の範囲外であることは明らか」とし、「人格権の侵害に対する事後的な権利の回復は著しく困難であることを考慮すると、その事前の差止めは許容されると解するのが相当」との判断を示している。
被害の取り返しのつかない甚大さを鑑み、事前差し止めもできるという司法の判断は、最低でもその場でヘイトスピーチを制止し、デモ自体を中止させる判断が可能であることを示している。

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