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3.11だからぐだぐだ話したい

1 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/03/11(土) 00:37:18.27 ID:qley8Yvo.net
今日はこういうスレ多いと思うけど
俺の話にもつきあってくれ

169 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/03/28(火) 20:42:34.14 ID:XOP1MgaJ.net
幼馴染は、お母さんとおじいさんを探しているようだった
幼馴染のお母さんもまた、在宅介護をしていたので、
俺のかーさんと状況がよく似ている
「避難所の名簿にもないし、伝言板にメッセージがあるわけでもないし
 もう、遺体安置所を探すほうが……」
津波の日から、もう2週間以上
亡くなっていると考えるほうが自然だが、それでも、遺体が出てくるまでは認めたくない
幼馴染が遺体安置所をめぐり、お父さんは遺体の捜索をしているのだそうだ
「そろそろ学校に戻んないといけないし、それまでに見つからないかな」
そう言い残して、幼馴染は炊き出しの列に紛れていった

駅前にいた炊き出しのテントは、いい匂いのカレーだった

170 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/03/29(水) 12:42:39.63 ID:oCiAFlF4.net
見てる保守

171 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/03/29(水) 19:55:20.26 ID:4A9HDIKb.net
見てるよ

172 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/03/29(水) 19:59:04.01 ID:EsGcs2xq.net
29日、実家の片付けをした
俺のいない間にねーちゃんが片付けてくれていたので
少しは床板が見えていた
この床板を剥がして、その下にあるものを引っ張り出してから
石灰を撒く……だと遅いので、床板の上にも多少石灰が撒いてあった

それにしても、片付けというのは進まない
汚水にまみれたガラクタばかりだし、
人間の力では運べないようなものまで、津波の力で家の中に入り込んでいる
大型トラックのタイヤとか、丸太とか、2人で片づけるのは無理である
そして、思い出とリンクしてしまうものを発見するたびに、感傷に浸る
壊れた洗濯かごを見ては、かーさんを思い出し、
じーさんの船の免許証を拾っては、きれいに洗う

173 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/03/29(水) 20:32:52.55 ID:EsGcs2xq.net
見つけて悲しかったのは、かーさん愛用のエコバッグだ
中には、じーさんの流動食の缶が入っていた
これを準備してから逃げようと思っていたのだろうか

在宅介護の介護者と被介護者が共に亡くなった
そんな話はよく聞いた
(自分の体感だけなので、被災地全体ではどうだったのかはわからない)
よくある死に方なのかもしれないと、思うしかなかった

174 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/03/29(水) 20:47:18.06 ID:XWG5aEUh.net
読めば読むほど悲しくなるのに、つい来てしまう

175 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/03/29(水) 22:14:11.56 ID:e26hCo0B.net
見てる

176 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/03/30(木) 18:30:07.93 ID:PwIM4X92.net
見てるよ

177 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/03/30(木) 18:47:50.11 ID:FcJ3Tbj3.net
30日、土葬のタイムリミットが迫っていた

震災直後に家族が死んだことが発覚した俺は、幸せな部類である
遺体安置所を巡回する必要がないからだ

遺体安置所には遺体の状態を書面で記した表が置いてある
死後2週間を超え、しかも水死の遺体をいくつも見て回るのは、よほど耐性がないと無理だ
まず書面で特徴を確認し、家族と一致しそうな遺体の番号をチェックして
その遺体の身に着けていたものの実物を確認し
そして、覚悟を決めてから遺体確認するのだそうだ
……この話は、のちに幼馴染から聞いた話である

178 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/03/30(木) 18:59:41.67 ID:FcJ3Tbj3.net
表に書いてある内容もかなりショッキングである
手足がないのは当たり前で、性別もよくわからないという状態である
年齢はおおよそ推定できるそうだが、それでも範囲は広い
そして、身長も書かれているのだが、それも割り引いてみる必要がある
瓦礫に押しつぶされた遺体の身長は、少し伸びるのだそうだ

そして、遺体の身に着けていたものを見せてもらう段階でも、
その日何を着ていたかを知らなければ、悩むばかりである
そもそも、ドロドロでボロボロになっていて原型がわからない
結婚指輪などがあるとかなり特定は早いそうだが、指が残っている保証もない

俺は、そういう体験をしなかった幸せなほうの震災遺族なのである

179 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/03/31(金) 19:40:07.76 ID:NhdFHPWz.net
31日、我々の自治体では土葬を行わないことがわかった
これまで通り、身元が判明した順に、火葬を行っていくという
そして、4月半ばに各地区ごとに合同葬儀を行うことが伝えられた

その当時の俺は、葬儀があるんだなと思うだけであったが
まだ家族が見つからない幼馴染は
「いつまで遺体を置いておける?それまでに見つけられる?」
春の陽気すら、敵に思えてくるようだった

とーさんから聞いた話だが
幼馴染のお父さんは、消防団と一緒に遺体の捜索をしているそうだ
とーさんも3月中は会社には行かずに、地域での活動を優先してきたが
そろそろ会社のほうにも行かなくてはならないらしい
ちなみに、ねーちゃんの勤め先は、津波で消えた

180 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/03/31(金) 19:41:22.75 ID:NhdFHPWz.net
以上、地震発生から3月末までのうろ覚えの記憶でした

181 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/03/31(金) 21:38:57.24 ID:6Tzda2d9.net
終わりですか?

182 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/03/31(金) 23:46:28.70 ID:YscCcN9/.net
ずっと見てます
辛い経験を語ってくれていて、なんて言ったらいいのか分からないんだけど
なんでもいいから続けてもらいたいと思ったりもします、、
ごめんね
でもあなたの言葉は本当に心に響きます

183 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/04/01(土) 19:35:10.03 ID:UqzOfEm7.net
ここまでお疲れ様
終わるのかな?
続けてくれるなら読む

184 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/04/01(土) 19:45:47.50 ID:gxi3AT2u.net
ありがとうございます
正直、俺自身は地震発生時に津波を見たわけじゃないんで大したことも知らないし、
遺体安置所の現実も、あらゆるドキュメントにまとめられてるんで
日ごとに話すこともないかな、と思います

合同葬儀のときのことを少し話そうかと思います

185 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/04/01(土) 19:54:37.98 ID:gxi3AT2u.net
葬儀の前日、おばあちゃんが団子をこしらえていたので
ねーちゃんと俺が手伝うことにした
4月も半ば、職場のある人は仕事に出かけていたので
職を失ったねーちゃんと、自宅待機を命じられている俺が暇だったのだ
かーさんの実家にいる間は、
実家の片付けの他、おばあちゃんの畑を手伝ったりしていた

つくっていたのは、葬式に供える団子である
合同葬儀なので、我々個人として準備するものは特にないし
団子をつくってもお供えするスペースなどないが、
おばあちゃんとしては、何かしなくてはいけない気持ちだっただろう
娘の葬儀である
親より先に死んではいけないというのは、このときのおばあちゃんの様子を思うと身に染みる
いくつになっても、娘は娘なのだ

186 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/04/01(土) 20:04:07.69 ID:gxi3AT2u.net
震災が起きてから、おばあちゃんの様子がおかしかった
耳が遠い以外は元気はつらつとしたおばあちゃんだったのに
なんだか気が抜けてしまったように
「たいへんなことが起きたもんだ」と繰り返し言うばかりだった
このままぼけてしまうのではないかと、周りはとても心配した

団子をつくる手はとても手際が良かった
目分量で生地をちぎっているのに同じ重さになる
「この年になれば、私が先に逝くものだと思うよねぇ……どうして……」
そればかりつぶやくおばあちゃんを見るのは、辛かった

187 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/04/01(土) 20:58:16.12 ID:ZxkGJtW2.net
1が話したい事を話したいペースで書いて欲しい

188 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/04/02(日) 04:55:19.84 ID:geAxMUgQ.net
自分も今では3人の親だから
お婆ちゃんの気持ち考えるとつらい
泣ける

189 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/04/02(日) 21:59:10.58 ID:0ROcifSF.net
合同葬儀は、近場で唯一津波を免れたお寺で行われた
このお寺で近隣4地区の葬儀を担当するので大忙しである
 この「地区」というのは小学校の学区より狭い区分であり
 過疎地域のそんな狭いところで大勢の人が亡くなったことがいかに恐ろしいことか

合同葬儀に行くため、遺骨安置所にじーさんとかーさんを迎えに行く
昨日、隣の地区の合同葬儀があったので、遺骨安置所も空いてきていた
とーさんは、瓦礫から掘り返した位牌を持ち
俺はじーさんの遺骨を、ねーちゃんはかーさんの遺骨を持ってお寺に向かった
おばあちゃんのつくった団子は、おばさんが持っていた
お寺は高台にあり、車がないと行けなかったので、またおじさんの車にお世話になった

190 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/04/02(日) 22:08:24.04 ID:0ROcifSF.net
各遺族が持ち寄った遺骨が正面の代に並べられた
じーさんとかーさんを隣同士に並べたので、まるで夫婦のようであった
ちなみに、遺影は置かれなかった
写真が残っていない人もいるからだろう

地区ごとの合同葬儀ということもあり、骨壺に貼られた名前は見知った名前ばかりだ
幼馴染の家族は、まだ見つかっていないようだった
俺が子供の頃に少年野球のコーチをしていたおっちゃんのお父さんの名前があった
ということは、コーチのおっちゃんも来てるのかなと思って周囲を見回したが
コーチのおっちゃんはいなかった
これはあとで知ることだが、おっちゃんも亡くなっていて、
合同葬儀の日にはまだ見つかていなかったのだ

191 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/04/02(日) 22:19:20.77 ID:0ROcifSF.net
合同葬儀は、遺族の席が足りず、立って参列する人もいた
こんなに人が亡くなったのだと考えるべきか
一族が全滅しなくてよかったと考えるべきか
俗名を読み上げるところが長すぎて、知ってる人ばかりで、
まだ若い人もいて、しかも、これでも全員ではなくて
連日、合同葬儀を担当している住職さんも涙声で
長い長い焼香の列が終わるまで、
俺はかーさんの遺骨とじーさんの遺骨を交互に眺めていた

192 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/04/02(日) 22:26:59.90 ID:0ROcifSF.net
葬儀が終わり、遺骨と卒塔婆を受け取ると、納骨のために墓地へ向かった
やっと、遺骨安置室からうちのお墓に移れるのだ

先祖代々の墓は、自宅のる坂道を上っていった先にある
山の中に、その地区の墓地がある
お墓に行く前に、一度実家に寄ることにした
そのころにはすっかり床板が見えるまでに片付いていたので、
親族でぞろぞろと入って、仏壇のあった場所に遺骨を置き、そこで手を合わせた

193 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/04/02(日) 22:38:29.19 ID:0ROcifSF.net
そして、実家から坂を上ってお墓に行く途中で、近所のおじちゃんに会った

家が無事だった近所の人たちは、自宅避難という形で生活をしている人もいた
プライベートはな空間が確保されているが、ライフラインは全滅状態である
(自宅避難者には、情報も物資も行き届かなかったという問題もあった)

「これはかーさんかい?こんなになってしまってなあ……」
ねーちゃんの抱える遺骨に向かって話しかけるおじちゃん
「最後まで家を離れなかったなんて、嫁の鑑だ。働き者だったもんなぁ」
という言葉には、こちらもなんと答えてよいかわからなかった
嫁としては正解かもしれないが、妻としては失格じゃないか
俺も一人前になったし、これからとーさんと余生を楽しむんじゃなかったのか
おじちゃんは、じーさんの遺骨にも話しかける
「オレもそっちに行くときは、また酒でも飲みましょう」

故人を悼んでくれる近所の人がいることは、とてもありがたい
でも、この震災で地域のコミュニティはバラバラになっていく

194 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/04/03(月) 00:00:21.76 ID:Ujqctdi9.net
泣けてきた
みてるよ

195 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/04/03(月) 06:24:51.36 ID:viJkd7W1.net
見てる

196 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/04/03(月) 13:28:02.45 ID:TRmAhI5k.net
見てるよ

197 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/04/03(月) 20:28:29.76 ID:ziKxAIhl.net
葬儀の話も終わりましたので
震災当日のねーちゃんの行動について語るとします

ねーちゃんはパチンコ屋の店員だった
パチンコ屋といううるさい環境では、緊急地震速報というのはあまり聞こえない
なんか、携帯がブルブルしてるなーと思ったらいきなり揺れたという
 緊急地震速報のサービスが携帯で始まってから、初めて鳴ったのがこのときだったので、
 音を聞いてもなんのことだかわからない人も多かったと思う
「外に出てくださーい!」とねーちゃんは叫んだ
非常時のマニュアルがあるので、その通りにお客様を誘導する
しかし、確変中だとその場を動かない人もいる
そのときは、「ま地震だけなら逃げなくても」と思い
無理やり連れて行くということはしなかった

198 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/04/03(月) 20:41:55.32 ID:ziKxAIhl.net
駐車場に誘導したものの、この日は寒かったこともあり
建物の中に戻ろうとするお客様を止めなかった
地震だけでは建物にはダメージはなかったので、安全かもしれない
しかし、停電になってしまった
確変中の台にいたおっさんも、停電ではしょうがないのでゆっくり外に出てきた
「やれやれ、今日はおしまいだわ 玉もこぼれちまって」
ねーちゃんはこのとき、こぼれた玉を数えろと言われるのではないかとヒヤヒヤしたという

中の確認をしにいった店長が、「中はめちゃくちゃだ」と言ったので覗き見ると
床に銀の玉が無数に転がっていたという
お客様も転ぶのが嫌なのか、奥まで入ってはいかなかった

199 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/04/03(月) 20:51:30.71 ID:ziKxAIhl.net
海のほうから、軽トラが走って来た
パチンコ屋の入り口あたりでうろうろするねーちゃんたちに向かって
「大津波警報だ!逃げろー!!はやくしろー」と叫んでいる
声の主は漁師歴60年の海のプロである
これはただごとではないとねーちゃんは思ったので、「逃げましょう」と言ったそうだ
ただ、この2日前に津波注意報が出て大したことがなかったので
逃げるのを渋るお客さんもいて参ってしまったという

200 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/04/03(月) 21:02:38.95 ID:ziKxAIhl.net
ここで幸いだったのが、道路を挟んですぐに高台があったことである
「すぐそこですから行きましょう」と店長とねーちゃんがお客さんを引っ張っていった
 平日の昼のパチンコ屋は、基本的に高齢の男性しかいないので
 目の前のきついきつい坂道を上るのを億劫に思うのもしょうがない

途中で高齢者グループホームの人たちと合流した
グループホームは十分高いところに立地しているが、
それでももっと高いところに避難すべきと判断したようである
車いすを押したり手を引いたり、声をかけたり、
頂上の広場までは、まるでお祭りのようだったという
なんだかんだで、全員が上りきった

201 : 【小吉】 @\(^o^)/:2017/04/04(火) 00:24:54.37 ID:3P699X/E.net
壮絶だね・・・
見てるよ

202 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/04/04(火) 19:41:38.88 ID:tVrko1j6.net
上りきったのは、午後三時を少し過ぎたくらい
地震発生から15分での避難であった
見下ろせば、まだ道路を走る車もあったという
やかましいサイレンと、消防車のカンカンという音が
寒さと曇天もあいまって不安を掻き立てた
(といっても、まさかあんなことになるとは想像もしていない)

ここでねーちゃんは、ふとかーさんのことが心配になり電話をかけた
このときは電話がつながったらしい
「あのね、家は大丈夫。なんにも倒れてないのよ、それより、あなたは大丈夫?」
かーさんは、このとき自宅にいたようだった
母親というものは、子供の心配をするものらしい
このとき、逃げてと言えたらよかったと、ねーちゃんは後悔している

203 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/04/04(火) 19:55:47.03 ID:tVrko1j6.net
高台の広場には人がいっぱいいたが、その多くは高齢者だったため
ボーっと立っているわけにもいかず、近所の家から毛布を運んだりしていたという
その間にも、坂道をやっと上って来る避難者がゾロゾロと集まって来た

消防車のカンカンという音がいきなり大きくなった
坂道を高速で上ってくる消防車から、消防団員が叫んでいる
「津波が来てる―――――!!!いそげええええええ」
ねーちゃんは、海岸のほうに目をやった

あそこは田んぼ、あそこは小学校、中学校、駅
おじさんの家、さっきまで働いてたパチンコ屋……
自分の知っている町は、黒い波に沈んだ
とても信じがたい光景から、ねーちゃんは目をそらしてしまった

204 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/04/04(火) 20:07:28.58 ID:tVrko1j6.net
このとき、目をそらしてよかったとねーちゃんは言っている
高台の真下にある道路では、クラクションと悲鳴が飛び交っていたのだ
そんなものを見てしまったら、立ち直れないと

「おおーい、津波が引いて行くぞ」
パチンコ屋のお客さんの一人が叫んだので、また海のほうを見た
車が列をなして海へ向かっていったように見えた
パチンコ屋のお客も、「俺の車がなあ」とつぶやいていた
この辺りは中古車販売店もあったので、「商品が……」と思ったそうだが
実際はそんな生易しいものではなかった

205 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/04/04(火) 20:20:30.49 ID:tVrko1j6.net
腕がずぶ濡れのおじさん二人が歩いてきた
(おじさんといっても60代後半 過疎地域では75歳からがじいさん)

「助けられなかった……なあ、□□ちゃん、流されてしまった」
(過疎地域では30代の女性はちゃん付けで呼ばれるのが普通)
このおじさんたちは、車に乗って助けを求める□□ちゃんの腕をつかんでいたそうだが
引き波に逆らえずに手を放してしまったそうだ
いくら体力自慢のおじさんでも、人が三人乗った車を引っ張るのは無理だった
□□ちゃんの車には、お母さんと足の悪いおばあさんが乗っていたそうだ

この話を聞いたねーちゃんの脳裏にはかーさんが浮かんでいた

206 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/04/04(火) 20:46:30.41 ID:9Rrj3a0E.net
津波の光景はテレビで何度も見たけど生で見たら本当に怖いんだろうな
見てるよ

207 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/04/05(水) 21:45:25.47 ID:eab6o21A.net
自宅に戻ろうと坂を下りようとしたねーちゃんをおじさんたちが止めた
「まだ津波はくる 歩くなら山を行け」
ねーちゃんは、山を歩いて自宅まで戻ることになる

勤務先から自宅はそう遠くなかったので、まだ日の出ているうちに墓地についた
自宅の前の坂を上った先にある墓地で、うちの墓がある
その近くには避難場所があったので、ご近所さんがいっぱいいた
近所のおばあさんが、ねーちゃんの顔を見るなり血相を変えた
「あんたのおかあさん、いないのよ!!」
いない、という言葉の意味を理解するのに時間がかかった
「みんな、いまさがしてるから」

208 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/04/05(水) 21:55:41.19 ID:eab6o21A.net
ねーちゃんは坂を下りた
いつもの風景がしばらく続いていたけれど、自宅が見えた途端に一変した
自宅の一階部分は瓦礫で埋まっていた
かーさんととーさんの車も埋もれていた
その瓦礫の上を、消防団のハッピみたいなのを羽織ったとーさんと
仕事の服装ままのおじさんが、かーさんの名前を呼びながら歩いていた

このときは、まだかーさんは生きているものと思っているので
近所の人もとにかくかーさんの名前を呼びまくっていたそうだ
呼べば返事があると思いながら

209 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/04/06(木) 23:41:34.04 ID:3ilR0GV6.net
かーさんを見つけることはなく、その日の日没を迎えた
坂の上のほうの無事だった家に、近所の人たちはお世話になった
といっても、ライフラインはプロパンガス以外はダメだったので
家の中はうす暗かった

水の中から引き上げられたじーさんが、布団に横になっていた
時折苦しそうな呼吸の音がしたが、どうしたらよいかわからない
痰の吸引の機械もないし、胃瘻のチューブもない
かーさんがいたら違ったかもしれないと、ねーちゃんは思った

210 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/04/06(木) 23:47:09.10 ID:3ilR0GV6.net
翌朝、とーさんとねーちゃんは早朝からかーさんを探した
瓦礫の上にはほんとにうっすらと雪がのっていた
家の周りの瓦礫を見ながら、どこにいるだろうかと考えながら
玄関の戸が外れて家の中のものが外に出ていたことから
とーさんとねーちゃんは玄関前の瓦礫を除けていた
この判断は正しかった
そこから冷たくなったかーさんが見つかった

211 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/04/06(木) 23:55:04.57 ID:3ilR0GV6.net
かーさんは服を着ていて、頭を押さえているように見えたそうだ
ズボンのポケットには携帯が入っていた
全身を掘り出したとき、ねーちゃんはかーさんに抱き着いたそうだ

ためらいなく触れる状態で見つかったことは幸いだっただろう
この津波で亡くなった人の大多数が、綺麗な状態で見つかったわけではない
とーさんとねーちゃんが早く見つけてくれたから
俺も、かーさんの顔を見てさよならが言えたのだ

212 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/04/07(金) 00:06:55.55 ID:jXOCTIES.net
まだこの地域には、自衛隊も消防も到着していなかった
道路は瓦礫に阻まれて、何も行き来はできない
そんな中で、遺体が見つかった
近所のおばさんたちが、「はやく身体を拭いてあげないと……」と言ったので
ねーちゃんは自宅の2階に入ってタオルを服をとって来た
かーさんの遺体はここで綺麗にしてもらい、着替えも終わった
そして、無事だった家の中に安置されることになった
この非常時に、近所の人たちの善意が、とても温かかった

寝ているじーさんにも、かーさんの死を報告した
じーさんは言葉を話せないが、涙を流したそうだ
この数年前にばーさんが死んだときもそんな反応だった
そして、翌朝じーさんも亡くなった

213 :1 ◆wTLN2DmNnU @\(^o^)/:2017/04/07(金) 00:32:37.21 ID:jXOCTIES.net
けっこうぐだぐだ話したな
人が死ぬ話ってやっぱお涙頂戴的な感じになってしまう
もう4月だし、話題は熊本地震に移っていくと思うから
今年はこのくらいで終わりにする

214 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/04/07(金) 15:14:55.66 ID:8mxN9ISK.net
乙でした
鬼気迫るお話でした
もっとお話聞きたいけど終わりなんですね

215 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/04/08(土) 03:18:25.83 ID:9+X4Ez+x.net
お疲れ様でした
ありがとう
幼馴染の家族が見つかったのか気になる

216 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/04/09(日) 21:30:54.54 ID:6mIGkdpq.net
お疲れ

217 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/04/11(火) 01:33:40.45 ID:vcqgHYPL.net
もう戻ってこないのかな
貴重な話をありがとう

218 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/04/12(水) 13:03:53.31 ID:qoT+J3AU.net
一刻も早い復興を。

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