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【小説】 卒業の時
- 1 :名も無き被検体774号+:2023/06/16(金) 17:44:15.11 ID:Xp4zuW5Q0.net
- おれはキツツキ。
幻の郷のとある山に住んでいる鬼だ。
いつもはそこら辺の妖怪を腕磨きのために倒しながら、色んな妖怪や人間とコンタクトを取ったりしている。
おれは昔山の四天王の4人目として生きていたこともあった。もう昔の話だがな。
他の奴らが力に物を言わせてる中、おれは力を通過点とし、刀に打ち込む事を良しとしていた。だから刀の技術はピカイチで、剣技で負けた事は一度もない。
- 2 :名も無き被検体774号+:2023/06/16(金) 17:45:19.09 ID:Xp4zuW5Q0.net
- 最近幻の郷では、人々が急にいなくなる異変が発生している。何が起きているのかは知らないが、たとえ何が黒幕であろうと変わらない。
面白い奴なら倒すだけだし、面白くなければ放っておくだけだ。
- 3 :名も無き被検体774号+:2023/06/16(金) 17:46:56.69 ID:Xp4zuW5Q0.net
- そう思ってぼーっとしていると、ある日山に麓の神社の巫女が訪ねてきた。
どうやらおれに異変解決に協力するよう要請してきたらしい。面倒くさいがお世話になってるので渋々協力する事にした。
- 4 :名も無き被検体774号+:2023/06/16(金) 17:50:45.86 ID:Xp4zuW5Q0.net
- とにかく、人が消えるという事なのであれば人里などの人が沢山いる場所に行って張り込むのが良いだろうという単純な考えで、おれは人里へと降りた。もちろん変な目で見られたが巫女がついてきてくれていたので大した事はされなかった。
- 5 :名も無き被検体774号+:2023/06/16(金) 18:00:07.85 ID:Xp4zuW5Q0.net
- 張り込みを始めて、体感で20時間以上経った後くらいだった。
横にいた巫女が消えた。
何も音も立てず、何も言わず、急に消えた。
- 6 :名も無き被検体774号+:2023/06/16(金) 18:10:01.30 ID:Xp4zuW5Q0.net
- おれは声は出なかった。ただ冷静になって状況を確認してみると、巫女がいた所に文字が刻まれていた。
【真実の名 machikane】
意味がわからなかった。真実の名って、どういう事なんだろう。おれが知っているあいつの名前は霊夢だ。流石にこれはおかしい、おかしいぞ。いったい誰がこんなイタズラを……?
- 7 :名も無き被検体774号+:2023/06/16(金) 18:26:06.46 ID:Xp4zuW5Q0.net
- その後───────────
霊夢がいなくなった事を辺りの妖怪に伝えていく。
霊夢の友人である魔理沙や、大きな館に住んでいる吸血鬼レミリア、地底の旧地獄という場所にいるさとり妖怪、永遠亭という屋敷にいるかぐや姫、その側近である永林、天狗の新聞記者である射名丸……。
そして、その行く先々でさらに恐ろしい事が起こった。行く先々で誰かが消えていったのだ。
魔理沙の所では彼女の友人の人形使いが、レミリアの所ではメイドが、と言った風に。
- 8 :名も無き被検体774号+:2023/06/16(金) 18:27:26.07 ID:Xp4zuW5Q0.net
- あまりにも不可解すぎる。何がおかしいって、誰もそれを止められない状態で、突如として、まるでくり抜かれたかのように消える。そしていた場所の床に必ず、【真実の名】の記述があるのだ。
【真実の名】は6つだ。
・diamond(魔理沙の友人)
・flash(メイド)
・cafe(さとり妖怪の所の猫)
・ansin(永林)
・gimlet(かぐや姫の所の兎)
・tiyonoo(白狼天狗)
規則性があるわけでもなく、意味も不明。どう考えてもおかしいのだが何がおかしいのかわからない。
とにかく何かが起きているのは間違いないがどうしようもないので、取り敢えず1番くるだろう人里に延々と張り込んでいた。
- 9 :名も無き被検体774号+:2023/06/16(金) 18:28:02.96 ID:Xp4zuW5Q0.net
- その間にも人間と妖怪もどんどん消えていった。永遠亭には誰もいなくなってしまった。地底ももうさとり妖怪とその妹以外は殆どいないし、天狗のいた山はとても静かになってしまった。
そんなある日、久々に山の四天王のみんなに会った。状況も状況だったからとても嬉しくて、一緒に酒を飲んで一夜を過ごした。
しかしその後の朝、起きてみると自分以外の3人がいなくなっていた。忌々しいあの【真実の名】の記述はもちろんあった。
小さい奴は「yayoi」
右手に包帯を巻いた、現仙人の奴は「taduna」
かなりデカい金髪の長髪の奴は「kageto」だった。
何故かはわからないが「kageto」の名前には不気味な懐かしさがあった。この名前を見た事はないはずなのに……。
- 10 :名も無き被検体774号+:2023/06/16(金) 18:28:55.49 ID:Xp4zuW5Q0.net
- 何故だ。誰がこんな事をしているんだ。
そう思っても誰がしてるのかなんてわからず、徐々に追い込まれながらも頑張って張り込みを続けていた。その間も射名丸がいなくなったりかぐや姫がいなくなったりした。でもだんだんどうでも良くなっていた。
そうして暫く経って人里の人が殆ど消えた頃。
そして妖怪も殆どいなくなった頃、ある事に気付いた。
15人、残り続けている奴らがいる。
妖怪は殆どいないに等しいのに。
周りが消える中、おれはそいつらを監視する方向へ舵を切り、監視に集中した。
でも、たいした事はない。怪しい所もない。意味がわからない。
残り続けているのは
レミリア、レミリアの友人パチュリー、人里の稗田阿求、天界の衣玖って奴、洩矢神社の巫女早苗、管狐の菅、エタニティラルバという妖精、魔理沙、お空という地底の妖怪、半人半霊の剣士妖夢、射名丸とは違う天狗のはたて、ポルターガイストのプリズムリバー三姉妹のルナサとリリカ、鬼傑組の組長の吉長八千恵、レミリアの妹フランドール、だった。
- 11 :名も無き被検体774号+:2023/06/16(金) 18:30:26.80 ID:Xp4zuW5Q0.net
- しかし絶対に怪しいので、必死に監視し続けていると、遂に奴らが人を消している所を見た。
しかしそれは、もう殆ど手遅れな時だった。
何故ならその頃にはおれとその15人しか残っておらず、おれが見たのはフランドールを八千恵が消した所だったからだ。
おれは気付いた。奴らは全てを消し、幻の郷を終わらせようとしているという事に。
しかし何故だ?何故生産性のない事をするんだ?と、そう思った。
そうして考えてるうちに、奴らは1人ずつ消えていった。何を言うわけでもなく何をするわけでもなく淡々と消えていった。
パチュリーがいなくなった時、おれは最後に残った奴に、レミリアに勝負を仕掛けた。
無駄だったが。
ただの吸血鬼であるこいつに、負ける事はない。取り戻せなくてもこいつは倒すと思ったが、そんな事をする暇もなくおれは取り押さえられた。
勝てない事がわかったので、おれはせめてこいつから色々聞き出そうと思った。そして"会話をしたい"と言ったら許諾してくれた。
- 12 :名も無き被検体774号+:2023/06/16(金) 18:31:10.93 ID:Xp4zuW5Q0.net
- 以下は、会話の内容だ。
「……なぁ、なんでこんな事したんだ」
「あなたが過去に囚われているからよ」
「……どういう意味だ?」
「この世界の全てが、あなたの記憶が延長させた分岐点に過ぎないの。早く脱出しないとあなたは出られなくなるわ」
「なんだと?これが妄想だと?」
「ううん。ちょっと違うのだけれど……ま、あんまり考えなくて良いのよ。そんな事は」
「早く目覚めなさい。あなたは鬼でもなければ忌み嫌われる存在でもないわ」
「……しかし、疑問が浮かんで止まらないぞ」
「?」
「何故分岐点に過ぎない、妄想にも近い世界に君はいるんだ?君の方こそ早く出るべきなんじゃないのかい?」
「私はあなたと一緒にここに閉じ込められたの。私とあなたと、この世界の皆は、「Z」という人間の能力によって閉じ込められた、元は全く違う存在なの。だから外に出なければならない。全て思い出して、出なければいけない」
「……そういう事か。しかしいきなり言われても信用できないな……」
「……だから、思い出して。思い出せれば、私を信用できるわ。予想してあげる。あなたは私を信用して、会えた事が嬉しくなって抱擁してくるわ」
「……君は、運命がわかる力を持っているだろう。ならそれはきっと……」
- 13 :名も無き被検体774号+:2023/06/16(金) 18:32:28.49 ID:Xp4zuW5Q0.net
- 「いいえ。私にそんな力はない。私はレミリアという名前でもない。私は吸血鬼ですらない。これは私が与えられたただの器に過ぎない」
この一言で、おれは全てを思い出した。
そして、彼女と抱擁を交わし、涙を流した。
ああ、そうか。
おれは、俺は、私は。
この世界の住人じゃないんだ……。
「……ねぇ、帰ろう」
「……うん。一緒に帰ろうか」
「……ちょっと遅くなっちゃったから、きっと妹達は怒ってるわ……」
「……ははっ。大丈夫だよ。きっと笑って許してくれる。絶対大丈夫」
「……そうだね。ありがとう、"mict"」
「……ああ。こちらこそありがとう、"yuki"」
- 14 :名も無き被検体774号+:2023/06/16(金) 18:33:00.57 ID:Xp4zuW5Q0.net
- 人には、子供の頃の苦い記憶がある。
それを苦いと思えている人は、生きていく上で成長しようと思えた人だけなんだろうと思う。
だからこの苦い記憶はいつまでも大事な物として、頭の中に保管しておくのが良いと思う。
いつかはその記憶も役にたつかもしれないし。
私は成長するよ、あなたのために。
あなたを幸せにするために。
ありがとう
〜fin〜
- 15 :名も無き被検体774号+:2023/06/16(金) 20:33:52.68 ID:Xp4zuW5Q0.net
- 読んでくれたかな?
一応マジな話が一部入ってるってのは言っておく。質問受け付けるよ
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