【玉ちゃんの酔滸伝】「やっとだよ！」嬉し懐かしの“満卓”　「スナック玉ちゃん」自粛要請期間からようやく脱出(玉袋筋太郎) [朝一から閉店までφ★]

朝一から閉店までφ ★

2021.10.30

　２５日、コロナ禍による飲食店への営業時間短縮要請が解除となりました。私のお店「スナック玉ちゃん」も１１カ月に及んだ自粛要請期間からようやく脱出です。「やっとだよ！」という思いがいっぱいです。

　当日は私も気張ってお店に遊びに行ってみると、大勢のお客さまが来店。本当に久しぶりの「満卓」でした。

　これまで入場制限やアクリルで客席を仕切ったりして頑張ってきましたが、オープンしてもノーゲストの日々の連続で、売り上げ７０％減など苦労がありました。ですから、この日の満卓になったお店の風景を見て、落ち込んだ気分が一発で解消したのです。

　この満卓という言葉、小さい頃は嫌いでした。

　両親は新宿でマージャン屋を経営していたので、小さい頃の私は家で連日の留守番となります。好きなテレビを見て時間を過ごしていましたが、やはり子供。ふと寂しくなってお母さんの声が聞きたくなり、お店に電話してしまうのです。

　何度もコールしますがなかなか電話に出てくれません。ようやくつながると、やたらジャラジャラうるさいノイズの中「はい、マージャン『富士』です！」と、はつらつとした母の声が聞こえてうれしくなります。

　「もしもし、お母さん？」

　「何だ、祐ちゃん（本名・祐一）か。どうしたの？」

　「別に…」

　「いま、満卓で大変だから、片付いたら帰るからね。早く寝てね」

　満卓という言葉は子供心に留守番で寂しい思いをしている私から母親を取り上げてしまう憎いフレーズだったのです。

　ところが、「満卓でお父さんは機嫌いいから、好きなものを買ってくれるよ」と母。確かに、父はいつもの雰囲気とは違います。モジモジしながら私がほしかったグローブをおねだりすると「よし、買いに行こう！」と一緒に街に出ました。満卓は私から母を取り上げてしまうけれど、家族がごきげんになる喜びもあるのだと学びました。

　すべての飲食店の皆さま、まだまだ厳しいこともあるかもしれませんが、解除されたのです。活気を取り戻し、頑張っていきましょう！　生きましょう！

https://www.zakzak.co.jp/smp/ent/news/211029/enn2110290022-s1.html

　■玉袋筋太郎（たまぶくろ・すじたろう）　お笑い芸人。１９６７年６月２２日生まれ。東京都新宿区出身。８６年にビートたけしに弟子入り。ＴＢＳラジオ『たまむすび』（金曜）、ＴＯＫＹＯ　ＭＸ『バラいろダンディ』（金曜）にレギュラー出演中。
２０１３年から一般社団法人全日本スナック連盟会長。著書に『スナックあるある　この素晴らしき魑魅魍魎の世界』（講談社）、『スナックの歩き方』（イースト新書）など。

【玉ちゃんの酔滸伝】「やっとだよ！」嬉し懐かしの“満卓” 「スナック玉ちゃん」自粛要請期間からようやく脱出(玉袋筋太郎) [朝一から閉店までφ★]

【玉ちゃんの酔滸伝】「やっとだよ！」嬉し懐かしの“満卓”　「スナック玉ちゃん」自粛要請期間からようやく脱出(玉袋筋太郎) [朝一から閉店までφ★]