超貴重な広川太一郎×ビートたけしの爆笑吹替『Mr.BOO！ミスター・ブー』香港映画を変えた男マイケル・ホイの傑作シリーズ [朝一から閉店までφ★]

映画 2023.02.02
ライター：高橋ターヤン

香港映画を変えた男、マイケル・ホイ

1960年代からカンフー映画一辺倒だった香港映画は、一人の天才コメディアンの登場で激変することになる。
マイケル・ホイ（許冠文）。1942年生まれのマイケルは、香港ラサールスクール、香港中文大学を卒業したエリート中のエリート。教職に就くなど普通に就職していたが、シンガーとして先に芸能界入りをしていた末弟サミュエルに誘われ、26歳でテレビ司会者として芸能界入りした。香港最大の映画会社ショウ・ブラザース社のリー・ハンシャン監督（ミュージカル時代劇を得意とし、後に『西太后』[1984年]や『火龍』[1987年]を監督）に抜擢されてコメディ映画『大軍閥』（1972年）に主演。活躍の舞台をテレビから映画へとシフトしていく。

ショウ・ブラザース社で『一樂也』（1973年）、『醜聞』（1974年）、『聲色犬馬』（1974年）という3作のコメディを撮った後、自らの映画製作会社ホイ・プロダクションを設立し、『燃えよドラゴン』（1973年）をはじめとするブルース・リー映画の大ヒットで勢いに乗る新興のゴールデン・ハーベスト社と契約。満を持して、自ら監督・脚本・主演を務めた『Mr.BOO！ギャンブル大将』（1974年）を発表する。

『Mr.BOO！』シリーズでアジアを席巻したホイ3兄弟

刑務所落ちしたスゴ腕ギャンブラーが、若手ギャンブラーと組んで一攫千金を狙うという『ギャンブル大将』は、サミュエルと共に出演していたコント番組の延長として制作され、香港では記録を塗り替える大ヒットを記録。その年の興行収入第1位となり、マイケルは一躍トップ映画スターの座に踊り出る。

マイケルは『ギャンブル大将』の勢いをそのままに、『Mr.BOO！ミスター・ブー』（1976年）を制作。ここでマイケルは、末弟サミュエルと同様にすでに芸能界入りしていた俳優兼歌手の弟リッキーも合流させる。

しがない探偵事務所を営むブーは、間抜けな部下チョンボと大小様々な依頼に応えていたが、優男のキットが入所してからさらにドタバタが加速し……という本作で、強権的なマイケルが間抜けなリッキーと掛け合いを行い、そこに色男のサミュエルが絡んで3人で難題を解決するという、ホイ3兄弟によるナンセンスコメディ映画を確立する。

『ミスター・ブー』は前作『ギャンブル大将』を大きく超えるメガヒット作となり、当然、香港の年間興行収入第1位を獲得。さらにアジア各地でも大ヒットし、香港最大のコメディアンだったマイケル・ホイはアジア最大級のコメディスターとなったのだった。

2作連続で大成功を収めたマイケルは、自身が経験したテレビ業界の理不尽な契約を基に、テレビ業界の裏側を描く『Mr.BOO！インベーダー作戦』（1978年）に着手する。大手テレビ局と契約しているが飼い殺し状態のテレビタレントのブーは、ライバル局への移籍を狙って弟のチョンボと友人のロンと共に契約書の奪還を狙うが……という『インベーダー作戦』は、またまた年間興行収入第1位のメガヒットとなったのだった。

さらに続く『Mr.BOO!アヒルの警備保障』（1981年）は、『ミスター・ブー』の倍という前代未聞のスーパーヒット作となるも、サミュエルとリッキーはそれぞれが超人気俳優となってしまったこともあって、ホイ3兄弟による『Mr.BOO！』シリーズはこれで終了となる。

日本語吹替版は広川太一郎✕ビートたけし＆きよし！

前述の通り、『Mr.BOO！』シリーズは香港だけでなくアジア全土でヒットするナンセンスコメディとなったが、カンフー映画ブームの真っ最中の日本では、配給会社が『ブルース・リー／死亡遊戯』（1978年）を買った際に抱き合わせで付いてきた作品であり、しばらく寝かされていたが劇場の編成の穴で公開したところ、予想外のヒット作となったという
（そもそも“Mr.BOO！”は日本で勝手に付けたタイトルであり、サモ・ハンの『デブゴン』シリーズやスティーブン・セガールの『沈黙』シリーズなどと一緒）。しかし、なんと言っても日本での『Mr.BOO！』定着は、テレビ放映時の日本語吹替版のおかげであろう。
https://www.banger.jp/movie/92333/

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